DeNA井納投手の訴訟からSNSや掲示板の書き込みの注意点~慰謝料請求の線引き
プロ野球選手・横浜DeNAベイスターズの井納翔一投手が、ネット上で奥さんの容姿を中傷した匿名の人物を、執念の調査で特定し、約200万円の慰謝料請求をしたことがニュースになりました。通常こういったケースは個人の特定が難しいですが、井納選手が情報開示請求などを駆使し、書き込みをした匿名の人物が20代女性の会社員であることを特定し、訴訟にこぎ着けました。
今回の事件を通して、TwitterやFacebookなどのSNSや2ちゃんねるなどの掲示板の書き込みの注意点、どういった書き込みから慰謝料請求の対象となるか、考えてみたいと思います。
井納投手のネット中傷に対する訴訟の概要
プロ野球・DeNAベイスターズの井納投手が、ネットの匿名掲示板「野球界の噂」に、奥さんの容姿に関する誹謗中傷を書き込まれたことに対し、書き込んだ女性を相手取り、名誉を侵害されたとして、約191万円の損害賠償を請求する訴えを起こしました。
今回の訴訟を写真週刊誌「フライデー(Friday)」がキャッチしました。野球界の噂というネット掲示板では、プロ野球選手の奥さん叩きが有名らしいです。
今回の一件が特筆すべきポイントは、こういった有名人に対する書き込みが、個人の特定まで行われ、訴訟に発展したことです。従来は、静観するケースがほとんどでした。
朝の情報番組モーニングバードで特集
今回の井納選手の訴訟事件について、2018年1月29日放送のモーニングバードで特集が放送されました。
※2018年1月29日放送のモーニングバードより
通常こういったネット中傷は匿名で行われるため、個人がすぐに特定できません。そこで、井納選手は、掲示板を運営者に書き込みした人のIPアドレスを入手します。そのIPアドレスを管理するプロバイダーに対し、情報開示請求を行いました。結局情報開示請求ではなく、情報開示請求されていることを知った書き込み主が、担当弁護士に連絡したことで、個人の特定につながりました。
どういった書き込みが慰謝料請求される?
今回注目したいポイントは、どういった書き込みであれば、慰謝料や損害賠償請求の訴訟を起こすことができるかという点です。SNSやネット掲示板は匿名性が高く、ついつい過激な表現や、誹謗中傷を書き込む人がいます。そういった書き込みの多くは、被害者は個人の特定や訴訟まで至らずに、静観もしくは泣き寝入りになるケースが大半です。
しかし、今回のケースのように、容姿を否定するような書き込みは、本人の名誉を傷つけた誹謗中傷に当たり、損害賠償の対象となる可能性が高いため、今回の訴訟に発展しました。
慰謝料請求可能な書き込みの線引き
では、どういった書き込みが損害賠償や慰謝料請求の対象となるか、モーニングバードでも弁護士の見解とともに、事例が紹介されていました。
番組の中で、線引きのラインとしては、「死ね」といったワードが含まれていると慰謝料請求の可能性が高まります。これは、ネットスラングとして用いられる「タヒね」も同様です。誹謗中傷は訴訟に発展する可能性があります。
それに対し、「高学歴は理屈っぽくてうざい」や「すげぇムカつく。嫌い」といった意見の表明の場合、慰謝料請求は難しいとあります。
今回のテレビの特集からも、書き込みが
- 「意見」の範囲内か
- 意見を超えた「誹謗中傷」か
によって、訴訟に発展するかの基準になることが分かります。
悪口は書き込まないことがオススメ
書き込みが訴訟対象になるかの線引きについて紹介しましたが、こういった線引きは時間とともに変化していきます。10年前なら、今回のケースも、裁判所で認められる可能性も低かったです。今はOKかもしれない書き込みも、将来は相手を傷つけるとして訴訟対象になる可能性は否定できません。
そういったことから、SNSや掲示板には、人の悪口や揶揄するような意見の書き込みは控えることがオススメです。悪口を吐き出したくなったら、まったく第三者に話すか、もし書き込む場合も、対象者が明らかにならず、一般的な意見として書き込むよう工夫が必要です。そうした工夫するよりは、楽しい書き込みをして交流を楽しむのがSNSの正しい使い方だと思います。
終わりに
今回、DeNAベイスターズの野球選手・井納投手が、ネット上の匿名掲示板に奥さんの容姿を中傷した書き込み主に対し、損害賠償の請求をしたことがニュースになりました。匿名掲示板やSNSでも、費用と時間さえあれば、個人を特定し、誹謗中傷に対して慰謝料請求は可能です。
今回は奥さんの容姿に関する内容でしたが、どういった書き込みだと、誹謗中傷に当たり、慰謝料請求の対象となるか。弁護士によると、
- 「意見の範囲内」→慰謝料請求の可能性:低
- 「意見を超えた誹謗中傷」→慰謝料請求の可能性:大
ということでした。ただ、こういった書き込みが意見なのか、誹謗中傷なのかといった線引きは時間の経過とともに変化します。できるだけ過激な表現や、もしかしたら見た人が傷つく可能性がある書き込みは控えることがオススメです。